新作『杜子春』に寄せて
かつて『杜子春』といえば、大学の学園祭などで発表
される人形劇団の定番の出しものであったし、NHKの
テレビ、ラジオなどを通じてくり返し放送された国民的人
気作品と言っても過言ではないだろう。しかし、いつの
間にか姿を消してしまったように思われる。特に若い世
代には馴染みがないようだ。
杜子春はこの世に嫌気がさし、この世を超越した世界
に生きようとして地獄に落ちるが、獣に姿を変えながら
も、ただひたすら杜子春の幸せを願う親の情愛の深さに
触れてはじめて自分自身の心を取り戻す。
人はいかに生きるべきかというテーマで貫かれた芥川
龍之介のこの作品には、いつの時代にも変わらぬ力強
いメッセージが込められていると思う。独り芝居を通じて
もう一度、杜子春に出会っていただきたいと切に願って
いる。
2003年1月